「終活」という言葉を最近よく耳にするけれど、具体的に何をすれば良いのでしょうか。今回は、終活の基本的な意味や、多くの人がなぜ終活に取り組むのか、そして終活を行うことでどのようなメリットがあるのかについて、分かりやすく解説していきます。
1-1. 「終活」とは?
終活とは、一般的に「人生の終わりと向き合い、そのための準備をする活動」と言われています。具体的には、自身の身の回りの物を整理したり、将来必要になるかもしれない介護や医療についての希望をまとめたり、お葬式やお墓の準備、さらには遺言書の作成といったことを指します。
しかし、終活は単に「死への準備」という側面だけではありません。むしろ、「人生の終わりを考えることを通して、残りの人生をより自分らしく、いきいきと過ごすための活動」 とも言えます。これまでの人生を振り返り、残された時間をどう充実させていくか、前向きに考えることも終活の大きな目的の一つなのです。
近年、「終活」が注目されている理由
終活への関心が高まっている背景には、少子高齢化や核家族化といった社会の変化があります。以前よりも、個々人が自らの老後や万が一の時のことを、主体的に準備する必要性が増していると言えるでしょう。
実際に終活に取り組む主な理由としては、以下のような点が挙げられます。
・残される家族への配慮
最も多くの人が挙げる理由の一つが、「自分の死後、家族に迷惑をかけたくない、困らせたくない」という想いです。具体的には、自身に介護が必要になった場合の希望を伝えたり、亡くなった後の様々な手続きや遺品整理などで、家族の負担を少しでも減らしたいという考えです。
・自身の納得のいく最期のため
他の誰でもない、自分自身の人生のエンディングです。だからこそ、できる限り自分の希望通りに、納得のいく形で最期を迎えたいと考えるのは自然なことかと思います。
・将来への不安を軽減するため
老後の生活や、万が一の病気や介護について事前に考え準備しておくことで、漠然とした将来への不安を和らげることができます。
「終活」に取り組むメリットとは?
終活には、自身にとってだけでなく、大切な家族にとっても多くのメリットがあります。
・家族の負担軽減
介護や医療の選択、葬儀の方法、遺品整理など、事前に意思表示をしておくことで、いざという時に家族が判断に迷ったり、手続きで苦労したりする身体的・精神的な負担を大きく減らすことができるのはメリットと言えるでしょう。
・家族間のトラブル防止
財産の相続などについて事前に意思を明確にしておくことは、家族間での無用な誤解や争いを避ける助けになります。自分がこの世を去った後に家族が自分のことで争っている姿を想像するのは、やはり悲しいものです。
・「死」や将来への不安の緩和
人生の終焉について具体的に考え備えることで、漠然と抱いていた「死」に対する不安や、残される家族への心配が和らぐことがあります。
・残りの人生を充実させるきっかけ
終活を行うことで、これまでの人生を振り返り、やり残したことやこれから挑戦したいことなど、新たな目標や生きがいを見つけるきっかけになります。結果として、残りの人生をより前向きに豊かに過ごすことにつながるでしょう。
このように、終活は単に「終わり」の準備ではなく、むしろ「今とこれからをより良く生きるため」の積極的な活動と言えるでしょう。
終活は具体的に何から始めれば良いか、チェックリストも用意していますので、ぜひ参考にしてください。
1-2. 終活はいつから始めるのが良い?最適なタイミングとは
「終活について基本的なことは分かったけれど、一体いつから始めれば良いのだろう?」「まだ自分には早いのでは…」と感じる人も多いかもしれません。このセクションでは、終活を始めるのに最適なタイミングや、年代別の取り組み方のヒントについて解説します。
終活に「まだ早い」はない?
終活を始めるのに「早すぎる」ということはありません。多くの場合、「思い立ったが吉日」と言えるでしょう。なぜなら、終活は心身ともに元気で、判断力や体力が十分にあるうちに取り組むことが非常に重要だからです。気力や体力が低下してからでは、時間もかかり、思うように進められない可能性も出てきます。
一般的には、定年退職を迎える60代や、子育てが一段落する50代で終活を意識し始める方が多い傾向にあります。しかし、最近では40代はもちろん、20代や30代といった若い世代でも、将来を見据えて終活に関心を持ち、準備を始める人は増えています。
終活を考えるきっかけとなるライフイベント
年齢に関わらず、以下のような人生の節目や出来事が、終活を考えるきっかけになることがあります。
- 身近な人との別れ: ご両親や祖父母、親しい友人など、近しい方の病気や死に直面した時。
- 自身の健康状態の変化: 大きな病気を経験したり、体力の衰えを感じたりした時。
- 人生の大きな転機: 結婚、子供の誕生、マイホームの購入、就職や転職、子どもの独立など。
- 情報との出会い: テレビ番組や雑誌、インターネット記事などで終活に関する情報に触れた時。
- 社会的な出来事: 大規模な災害などを経験し、自身の「万が一」を意識した時。
年代別の終活でおさえておきたいポイント
終活はどの年代で始めても間違いではありませんが、年代によって終活で取り組む内容の重点が変わってくることも多いかと思います。ここでは年代別におさえておきたいポイントを整理していきたいと思います。
20代・30代の終活
この年代では、まず「自分を知る」「人生設計をする」という視点が中心になるでしょう。
- デジタル終活:
スマートフォンやPC内のデータ整理、SNSアカウントの取り扱い、各種オンラインサービスのパスワード管理など。これについては、国民生活センターや消費者庁からも注意喚起がなされています。(例:国民生活センター「今から考えておきたい「デジタル終活」」) - 万が一への備え:
結婚、子供の誕生など、人生の転機には加入している保険などの確認や見直しも良いかと思います。 - 簡単なエンディングノートの作成:
自分の大切な情報(連絡先、アレルギー、かかりつけ医など)や、簡単な希望などを書き留めておくと何かあった時に安心です。法務省でもエンディングノートの様式例を公開しています。(例:法務省「エンディングノート」)
40代・50代の終活
40代50代では自身の老後の話だけでなく、両親の終活も視野に入ってくるような年代と言えるでしょう。
- 健康管理と医療への備え:
定期的な健康診断、持病の管理、将来の医療に関する希望の検討。厚生労働省では「人生会議」として、人生の最終段階における医療・ケアについて話し合うことを推奨しています。(参考:厚生労働省「人生会議」) - 資産の棚卸しと形成:
現在の資産状況を把握し、老後資金の計画を立て始める良いタイミングとも言えます。 - お墓や葬儀の情報収集:
ライフスタイルの変化に伴い、現在は、お墓や葬儀のプランなど様々な選択肢があります。それらの情報を少しずつ集めながら考えるのに良いタイミングです。 - 親の終活サポート:
親の終活について実際に進めていかなければならないことが増えてくるかと思います。親の意向を確認し、必要に応じてサポートを始められるようにしておきましょう。
60代以降の終活
60代以降では、より具体的かつ本格的に終活を進めていく時期と言えます。元気なうちに進めておくことで子供や孫の世代の負担を確実に軽減することができるでしょう。
- 身辺整理・財産整理:
不要なものを処分し、財産目録を作成しておきましょう。 - 遺言書の作成:
法的に有効な形で自分の意思を残すことは大事です。法務省では「自筆証書遺言書保管制度」を設けています。(参考:法務省「自筆証書遺言書保管制度」) - エンディングノートの完成:
これまでの準備や想いを具体的にまとめておきましょう。 - 葬儀やお墓の契約:
希望がある場合には、事前に契約を済ませておくことも大切です。
早く終活を始めることには、時間をかけてじっくりと納得のいく準備ができる、体力や判断力があるうちに自分の意思を明確に残せる、そして何よりも「これからどう生きるか」を考えることで残りの人生をより豊かにできる、といった多くのメリットがあるといえるでしょう。
1-3. 終活で取り組む主な内容、終活「やることマップ」
終活と一言で言っても、具体的にどのようなことに取り組めば良いのでしょうか。やるべきことは意外と多岐にわたるため、全体像を把握し、計画的に進めることが大切です。このセクションでは、終活で取り組む主な内容をカテゴリー別に整理し、「やることの地図」のようにご紹介します。
終活の「やることマップ」:主な5つのカテゴリー
終活で取り組む内容は多岐にわたりますが、まず大きく以下の5つのカテゴリーに分けて考えると、何をすべきか整理しやすくなります。
1.自分自身に関すること(医療・介護・意思表示など)
- 健康管理と医療への備え:
現在の健康状態の記録、かかりつけ医の情報、アレルギーの有無、持病など、人に連携できるように備えておきましょう。 - 介護の希望:
将来介護が必要になった場合、どこで(自宅、施設など)、どのような介護を受けたいかなどをまとめておくのが良いでしょう。 - 終末期医療(延命治療など)の意思表示:
どのような医療を望むか、あるいは望まないか。臓器提供の意思なども含みます。厚生労働省が推進する「人生会議(ACP)」も参考に、ご自身の考えをまとめておくと良いでしょう。(参考:厚生労働省「人生会議とは」) - エンディングノートの作成:
自身に関する情報や希望、大切な人へのメッセージなどを記録するノートです。法的効力はありませんが、自分の考えを整理し、家族に伝えるために非常に役立ちます。法務省のウェブサイトで様式例が公開されているものもあります。(例:法務省「エンディングノート」)
2.財産に関すること(資産整理・相続・遺言など)
- 資産の把握と整理:
預貯金、不動産、有価証券、貴金属、生命保険、年金などをリストアップし、現状を正確に把握します。 - 負債の確認:
ローンや借入金など、マイナスの財産も忘れずに確認します。 - 不要な口座や契約の整理:
使っていない銀行口座やクレジットカード、サブスクリプションサービスなどを見直します。 - 相続の準備:
誰に何を相続させたいか、相続税はどのくらいかかりそうかなどを考えます。相続税については、国税庁のウェブサイトで情報提供されています。(参考:国税庁「相続税」) - 遺言書の作成:
法的に有効な形で、財産の分配などについての最終意思を記します。専門家への相談も検討しましょう。法務省の「自筆証書遺言書保管制度」も活用できます。(参考:法務省「自筆証書遺言書保管制度」)
3. 身の回り・持ち物に関すること(生前整理・デジタル終活など)
- 物理的な物の整理(生前整理):
衣類、書籍、趣味の品、家具、家電など、身の回りの物を整理し、不要なものは処分します。これは残された家族の遺品整理の負担を大きく減らすことにつながります。 - 思い出の品の整理:
写真や手紙、記念品などを整理し、残し方を考えます。 - デジタル遺品の整理(デジタル終活):
パソコンやスマートフォン内のデータ、SNSアカウント、オンラインバンキング、各種ウェブサービスのID・パスワードなどを整理し、どう取り扱うかを決めておきます。デジタル遺品に関するトラブルや注意点については、国民生活センターや消費者庁が情報提供を行っています。(例:国民生活センター「デジタル遺品のトラブル」) - 大切な書類の保管:
公的書類(保険証、年金手帳、マイナンバーカードなど)や契約書類などを分かりやすくまとめて保管します。
4. 葬儀・お墓に関すること
- 葬儀の希望:
どのような形式(一般葬、家族葬、直葬など)、規模、宗教で行いたいか、または行いたくないか。葬儀サービスに関するトラブルについては、消費者庁が注意を呼びかけています。(参考:消費者庁「葬儀サービスのトラブル-後悔しない葬儀のために知っておきたいこと-」)
- 遺影写真の選定:
いざとなった時に遺影写真がなくて遺された家族が困ってしまったという話もよく聞きます。自分の気に入った写真を事前に選んでおくと良いでしょう。 - 参列者リストの作成:
葬儀に誰を呼んでほしいか、誰に連絡してほしいかをリストアップしておく。 - お墓の希望:
どのようなお墓(一般墓、樹木葬、納骨堂など)に入りたいか、あるいは散骨などの供養方法を希望するか。すでにお墓がある場合はその情報をまとめておきましょう。お墓や埋葬に関する法律については、厚生労働省のウェブサイトで確認できます。(参考:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」) - 費用の準備:
葬儀やお墓にかかる費用を把握し、準備方法を検討しておく必要があります。
5. これからの人生に関すること(生きがい・やりたいことなど)
- 人生を振り返り、これからやりたいことリストの作成:
これまでの人生を振り返り、残りの人生で挑戦したいこと、行きたい場所、会いたい人などをこれからのためにリストアップしておくのも良いでしょう - 新たな社会や人とのつながりづくり:
ボランティア活動や趣味のサークルなど、新たな社会や人とのつながりを見つけることも、豊かな老後につながります。 - 大切な人へのメッセージ:
家族や友人への感謝の気持ちや伝えたいことを、手紙やエンディングノートなどに残しておくことをおすすめします。
「終活スタートチェックリスト」で具体的に始めよう
これらの項目を一度にすべてやろうとすると大変に感じるかもしれません。まずは全体像を掴み、自分にとって優先度の高いものから少しずつ手をつけていくのが良いでしょう。
より具体的なチェックリストは、以下の記事で詳しく解説しています。
終活チェックリスト完全版 – 年代別・状況別に必要な準備をリスト化
まとめ:あなたに合った「終活」の第一歩を今日から始めよう
この記事では、「終活」という言葉の基本的な意味や必要性、始めるタイミング、そして具体的な取り組み内容の全体像について解説してきました。
終活は、決してネガティブなものではなく、むしろこれからの人生をより自分らしく、安心して、そして豊かに生きるためのポジティブな活動です。残される家族への配慮はもちろんのこと、自分自身の人生を見つめ直し、新たな目標や生きがいを発見するきっかけにもなり得ます。
終活に「早すぎる」ということはないので、まずはこの記事で紹介したような情報の中から、自身が「これならできそう」「ちょっと気になる」と感じたことから、気軽に一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。それが、あなた自身で納得のいくエンディングを迎えるための、そして今をより良く生きるための大切なスタートになるはずです。
IQUOでは、今後も終活に関する様々な情報を具体的にお届けしていきます。ぜひ、あなたの「知りたい」を見つけるためにご活用ください。
参考:関連する公的情報源
・デジタル終活:国民生活センター「今から考えておきたい「デジタル終活」」
・デジタル遺品:国民生活センター「デジタル遺品のトラブル」
・エンディングノート:法務省「エンディングノート」
・人生会議:厚生労働省「人生会議」
・自筆証書遺言書保管制度:法務省「自筆証書遺言書保管制度」
・相続税:国税庁「相続税」
・墓地、埋葬等に関する法律:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」
・葬儀サービスのトラブル:消費者庁「葬儀サービスのトラブル-後悔しない葬儀のために知っておきたいこと-」