もし、明日家族が死んだとしても、慌てることのないように準備はしてありますか?葬儀をすることになった時、すぐに連絡できるところはありますか?
「いざという時のために葬儀をどこにお願いするか」そんなことを考える際に、1つの選択肢として 互助会 の利用があります。若い世代にとってはあまり馴染みがない「互助会」という組織、一体どういったものなのでしょうか。
今回は、冠婚葬祭で使えるサービスの 互助会 について、仕組みやメリット・デメリットなどを分かりやすく紹介していきたいと思います。
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互助会とは
互助会とは冠婚葬祭などの費用を、月々の掛金で積み立てていくシステムです。昔は、共同でお金を出しあって冠婚葬祭にかかる費用を相互扶助するために作られた組織でした。最近では婚礼での利用割合は1割以下といわれており、一方で葬儀のための利用が増加しています。
平成29年3月現在、全国の互助会数は256社。分布は以下のような感じになっています。現在の加入契約数は2,331万件。
昔は互助会に入会していることも一般的でしたが、最近では互助会の数は減少傾向で、それに伴い、互助会そのものを知らない人や仕組みについて間違った知識やイメージで敬遠したままの人も多くいます。たしかに冠婚葬祭系の昔からのシステムと聞くと、不透明でとにかくお金がかかるといったイメージを持ってしまいますよね。しかし、全国には優良な互助会も数多くあります。むしろ時代の移り変わりで互助会ニーズが減少する中、企業努力を怠ったり不誠実なサービスを提供してきた企業は淘汰されつつあるように感じます。
今回はそういった気になるところをはっきりさせ、適切なサービスを選択するため、まずは互助会のメリットとデメリットに分けて見ていきたいと思います。
互助会のメリット
互助会のメリットは、大きく分けて、お金の話と施設の話 があります。
1. 互助会割引が受けられる
まず、互助会へ登録して会員となると、いざ誰かが亡くなった時、葬儀を会員料金で行なうことができる というメリットがあります。
例えば、通常の葬儀費用が40万円かかるとすると、月々で積み立てた金額24万円と互助会会員割引分の15万円で相殺されて、いざ葬儀となった時には 1万円 で葬儀を行なうことができるといった仕組み。
積み立て分 -240,000円
互助会割引 -150,000円
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10,000円
ただし、ここで「互助会割引大きい!今すぐ加入だ!」と思ってしまった人は少し注意。元の葬儀費用を高く設定してしまえば、互助会割引分を大きくすることは簡単です。単純な葬儀費用に関しては、元が割高に設定されている場合もあるので、あくまで他の葬儀社などと比較した上で本当に得かどうか判断をするようにしましょう。また、上にあげた例は最低限のプランの場合といった感じなので、実際に葬儀を行なう際にオプションをつけたり少し豪華なプランを選ぶと葬儀時に追加で支払う額は増えていくことも押さえておきましょう。
「互助会に入れば積み立て金のみで葬儀を行なえる」と間違った知識を持っている人も多くいるようなので注意。質の低い互助会の場合には営業スタッフがこういった不誠実な表現で勧誘するパターンもあるせいで、互助会=詐欺だと騒ぐようなトラブルの話もよく耳にします。
実際、最低限プランの場合には葬儀時の追加支払いがほんのわずかで済む場合はありますが、プランは実際に葬儀を行なう際に選ぶことになるので、その時にオプションをつけたり営業トークに唆されたりすると追加支払いが積み立て金よりも多くなってしまいます。プランの内容の確認や契約時の約款は難しくても予め確認した上で加入するようにしましょう。
2. 負担の少ない分割払いでいざという時に備えられる
互助会の一番のメリットとしてはこれではないでしょうか。やはり、いざ家族の誰かが無くなって葬儀費用が何十万とかかってしまうと瞬間的な金銭面の負荷は大きいものですよね。また、何も準備をしていなかったその時にはお金の心配以外にもどこで葬儀をするのかなど場所の心配も出てきます。
互助会に加入すると月々積み立てる形になるので負担はゆるやかになり、会員登録時には具体的な料金体系などが確認できるので前もって葬儀にかかるコストを考えておくことができます。そして家の近くの利用可能な会場を事前に見ておくこともできるので、いざという時に葬儀場所が確保できないといった心配もありません。
事前準備のない葬儀ではコストのせいで故人の希望が聞けなかったり式場が確保できなかったり、トラブルも多いので、互助会会員割引を受けながら無理なく備えておけるのではないでしょうか。
+α 互助会積み立ての疑問
A. 積み立てという言葉を使っていますが、厳密には割賦払い(契約金額満額を分割して払っていく形)が一般的です。つまり満額払い終わったらそれ以上払う必要はないということです。現在の互助会では総額24万円の積立プランが多いのではないでしょうか。
A. 差額を払えば互助会のサービスがそのまま受けられます。ただし、分割払い開始まもなく(180日以内が一般的)に亡くなった場合は、支払う金額が少し多くなる場合があります(加入時の規約を読んで注意しておきましょう)。
A. 一括で支払うことも可能です。一括支払いの場合には1割程度の割引が適用されるのが一般的です。
A. あくまで積み立てなので、葬儀を将来行なうであろう人数分の額を積み立てる形になります。つまり、上で書いた総額24万円の積立プランというのは葬儀1回分になります。ただしこの1回分というのは家族で1回分という形なので、基本的に誰が亡くなったか等は関係ありません。
3. 施設の選択肢が割と豊富
互助会は地域ごとにあり、豪華な設備を持っている会社も多いため、設備が整った施設で葬儀をおこなうことができる点もメリットです。また、葬儀を行なえる場所が限られているような地方でも、比較的家の近くの施設を選ぶことが容易にできることが多く、高齢で移動が困難な場合にも負担が少なく葬儀をおこなうことができます。
最近では格安葬儀プランを全国提供するようなサービスも増えてきましたが、価格は抑えられるものの希望日に施設が押さえられなかったり、提携施設が家から遠いところにしかない等といった不満の声もあるようです。
また、どちらも実際の葬儀時にプランを改めて選択することになりますが、いざ葬儀になった時に人をたくさん呼びたいといったニーズが出た場合にも、地域に多くある施設から選べると会場の広さも融通がききやすいようです。逆に格安葬儀プランを全国提供するようなサービスの場合、提携施設がたくさん書かれていても、じつはその中の一番小さい部屋しか使うことができなかった といったケースもあるようなので注意が必要になります。
4. 各種クーポンが毎月もらえることも
互助会に加入していると、その地域の施設利用の優待割引や、飲食店、宅配ピザなど、割と使いやすいクーポンが毎月もらえるような会員サービスがあるところも。そういった特典がある互助会の場合は、ギリギリになって加入するよりは前もって加入しておくと毎月色々な割引が受けられます。
ただし、デメリットのほうでも触れますが、遠方への引越しの可能性があったり何十年も先を見越してというのはリスクが高いのであまりおすすめしません。
互助会のデメリット
1. 解約が面倒
解約フローが複雑だったり、引き止められたりなど、解約に手間や時間がかかる場合があります。また、解約時に手数料を取られて掛け金が一部戻ってこない場合も。
2. 希望するプランがないことがある
基本的に、互助会では決められた葬儀プランがいくつかあるような形をとっています。そのため、最小限のプランよりさらに簡素なものだったり、オプションにないことには対応してもらえない場合があります。
結果的に希望する葬儀が行なえなかったり葬儀費用が膨らんでしまうことがあるので、事前に用意されているプランと自分達の希望をすり合わせて確認をしておきましょう。
3. 引越しなどに対応しづらい
互助会は基本的にその土地土地にあるものなので、利用できる葬儀式場もその地域の周辺(県内など)に限られている場合が多いです。そのため、遠方へ引っ越したりすると葬儀式場も離れたところになってしまうため逆に不便になってしまうこともあります。
4. 互助会は経営悪化や倒産することも
互助会は、公共サービスや慈善団体ではなく一般の営利企業なので、経営悪化で事業を縮小したり、最悪の場合は倒産だってすることも十分にあります。そして互助会が倒産した場合の保全額(返金額)は半分しか保証されません。
一般の企業なので将来の業績がどうなるかは分かりませんが、不安を感じる場合には、債務超過が無いかどうかなど会社の経営状況について調べてみた上で選ぶと良いでしょう。
失敗しない互助会の選びかた
上で互助会のメリット・デメリットを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
お得なこともあるけれど仕組みが複雑でプランが色々あって、スタッフが良いとこだけをアピールしてきて・・・。これ、携帯電話の契約とかに似ていますよね。
トラブルになる原因も多いけれど便利なサービスというのは、利用する側が気をつけておくべき点がいくつもあります。ここでは簡単に互助会を選ぶ際、加入する前に確認しておきたいポイントを紹介しておきたいと思います。
◆加入前に葬儀プランやオプションをある程度決めておく
互助会は積み立てで最低限のプラン分のお金を払い、実際の葬儀時にはプランを改めて選択して、差額があれば追加でお金を支払うような流れになります。そのため、互助会に入る時には「細かいオプションとかは実際の葬儀時に選べば良いや」といった状態の人も多くいます。
細かいオプションというのが、結果的に追加でお金をたくさん取られる原因になりトラブルやクレームの原因になるので、今考えるのが面倒でも必要なものかどうかを1つ1つ見て話合っておきましょう。いるものいらないものが見えてくると自分達に合った葬儀プランが用意されているかの判断にもなるので、互助会に加入するか格安葬儀サービスを契約するかといった比較検討にも活かすことができます。
葬儀の形は、親族が出てきてややこしくなることがあります。最低限で良いつもりでいたのに盛大にやらないとは何事だと親族が騒いだ結果、高い葬儀費用がかかってしまったなんて話も。できるだけ具体的に葬儀の希望を話したり聞いておきましょう。「やらなくても良い」と言うのであればどこまでのことをやらないかまで詰めておいたほうが良いでしょう。
◆近くに提携施設があるかどうかを調べて下見しておく
互助会の一番大きいメリットは割引云々よりもやはり地域に根ざしている点ではないでしょうか。逆に言えば、家の近くに提携施設が無いのであればその互助会への加入はあまりメリットがないとも言えます。
葬儀をどこで行なうかというのがぼんやりとしたままだと不安が残ってしまい、その時に右往左往しかねないため、家の近くにその互助会の提携施設がいくつかあるかを調べ、実際に候補になりそうな会場をいくつか見ておいてシミュレーションしておくと良いでしょう。
◆解約方法などもあらかじめ聞いておく
契約の解除というのはどんなものでもトラブルの原因になりがち。互助会も解約しなければならないケースがいつ出てくるとも限らないので、いざという時にトラブルにならないように解約方法や解約金の事は加入前にはっきりさせておきましょう。
もし解約方法を曖昧にするような互助会であれば、後々も不誠実な対応をしてくる可能性は高いので、加入は避けたほうが良いかもしれません。
◆葬儀会社や格安葬儀サービスとしっかり比較をしてみる
「しっかり比較する」というのは、最低金額だけを比較するのではなく場所や自分達の要望を踏まえて比較することです。互助会でも葬儀会社でも、基本的には良いことしか押してくれないので、不透明な部分をつぶしながら比較していくことが大切になります。
「多少お金がかかってもいざという時に場所に困ったり手間や面倒をかけたくない」という人、「どんな小規模になっても構わないからとにかく金額を抑えたい」という人では、それぞれニーズが全く違うので選ぶべきサービスも変わってくるかと思います。金額は一つの指標として大切ではありますが、しっかりと要望を話してそれらを踏まえた上で互助会に入ったほうがメリットがあるかを検討してみましょう。
子どもの世代で助けてあげよう
これは互助会に限った話ではありませんが、どうしても葬儀関連は準備が遅くなりがちなので、高齢になってから契約するパターンが多くあります。そのため、判断力が低下している状態で不透明なことがあるまま話を進めてしまったり、スタッフに言われるがままになったり、確認を全くしなかったり。
こういったことがトラブルの原因になってしまうので、契約書を読めて適切に質問ができる若い子ども世代が助けてあげられるのが理想です。自分が生まれた時に面倒を見てもらった恩返しとして、今度はぜひ親が死ぬまでの準備の面倒を見てあげてください。
おわりに
互助会のメリットデメリットについて触れてきましたがいかがでしたでしょうか。特に若い世代では互助会についてよく知らない人も多いのではないでしょうか。最近では全国対応の格安葬儀の利用者も増え、古くからある互助会は完全に取って代わられるかと思いきや、一方で費用面以外での葬儀への不安が払拭できず互助会のような地域に根ざしたサービスに乗り換える人もいるようです。
葬儀の準備は家庭や人それぞれのニーズがあるので、選択肢の1つとして互助会も正しい知識を持っておくことをおすすめします。