「リストカット」という単語を耳にしたことのある人は多いと思います。
最近では、特に若年層のリスカが増加していると言われています。
SNSの流行により、アピールしたいだけの人も一部見られるようになりましたが、今回は真面目に、「やめたい」「やめさせたい」と悩んでいる人のためにリストカットがやめられない原因や心理を見ていきます。
mokuji
1. リストカットとは
リストカット(リスカ)とは、カッターナイフなどの刃物を用いて主に上腕を傷つける自傷行為のことを言います。
細かく分けると、手首を傷つけることをリスカ、腕を傷つけることをアムカ、脚を傷つけることをレグカと呼びます。
ちょうど偶然にも、この記事を書いている途中に、アイドルによるリストカット関連のちょっとしたニュースがあったところですが、
今回は、切る人も切られる人も、リストカットについて少し理解を深めましょう。
リストカットをしたくなってココへ来た人は、こちらの記事を読んでみてください。
⇒ 別記事:リストカットがしたくなったら、やめたいなら、代替行為を試してみる
リストカットのような自傷行為は、一般的には、言語化できないまま過度のストレスや不安を感じ、自暴自棄に陥ったり自分の心が潰されそうになった際のストレスの発露として行われることが多いとされています。
また、「リストカットのような自傷行為には命を懸けても伝えたい言葉が必ずある」 と言われることもあるように、SOSを言語化できないような心理状態で衝動的にとにかく腕を切ってしまうというような場合もあるため、止めろと言われて簡単に止められるものではありません。
無自覚だったストレスが身体の調子に現れるのと同じような感じで、無意識に行動として現れることもあるということです。
そして、リストカット後しばらくは、精神的には少し楽になることもありますが、あとでリストカットしたことを後悔することも多いといわれています。
2. リストカットはやめられる?やめさせられる?
2-1. 「リストカットは良くない」は良くない
リストカットを繰り返す相手に対して、それをやめさせたいと思うのは当たり前の話です。
しかし、
リストカット=良くないこと だからリストカットをやめろというのは逆効果です。
何故なら、良くないことだということは本人も分かっていることが多いため、結果としてやり場のないストレスを余計にためさせてしまうことになります。
2-2. 「どうして切ったのか」は良くない
また、リストカットをやめさせるために、
「なぜリストカットをするのか」「どうして切ったのか」と直接的な理由を問うこともオススメはしません。
抱えている悩みや不安、ストレスの原因を聞こうとする事はとても重要ですが、なぜリストカットをしたのかという聞きかたはあまり意味がありません。
なぜなら、本人にとっても、はっきりとリストカットの動機が意識されていることは少なく、ただやむにやまれずにリストカットに及ぶ場合が多いからです。
上にも書いたとおり、とにかくやり場のない気持ちやストレスの結果の行為であるため、理由を言語化できないのは当たり前の話です。
3. リストカットをもっと知ろう。防衛機制の4パターン
良くないことだと分かっていて、直接的な動機もないのに、じゃあ、なぜリストカットをしてしまうのか。
リストカットは、強い見捨てられ感や分離不安に対して、自分自身をごまかす手段(防衛機制)としておこなわれることが多いといわれています。
そして、その自分自身をごまかす手段としては、これから紹介する4パターンがあると考えられています。
(ただし、本人には動機がはっきりと意識されていない事が多いです。)
ちなみに、分離不安とは、愛着のある人や場所から離れるときに生じる不安のことを指します。
「子供がお母さんと少しでも離れると泣き出し、他の人からの慰めも全く受けつけないのにお母さんが戻るとすぐに不安は解消し元気になる」 といった光景は誰しも見たことがあると思いますが、あれが分かりやすい分離不安の反応です。
3-1. ヒステリー防衛機制によるリストカット
このパターンは、分離不安から自分と他人の区別のないような一体感を求め、他人にも自分のことを全て理解して欲しいというような強い願望から、それが現実的に叶わない場合に「誰も自分のことを分かってくれない」ということに傷つき、その結果、強い喪失感に襲われます。
その喪失感に堪えられず、何とか自分を理解してくれる愛情対象を取り戻したいという心理から、みんなの関心を自分だけに集めようとリストカットに及ぶものです。
ここまではよく聞く話で、そのため、「かまって欲しいからリストカットするのだろう」などと言われることもありますが、
じつは、かまって欲しいという心理的な欲求は本人としてはほとんど意識されていないことが多いようです。むしろ本人は傷ついてやむにやまれずだったり、何とかして自分の気持ちを分かってもらいたいという想いからリストカットをしてしまっているという意識なので、余計に悩み、「病む」状況に陥っているということもあります。
ただ、本人は潜在的に「誰も自分のことを分かってくれない」という意識を持っているため、ささいな事でもすぐにリストカットに及んでしまいます。
3-2. 否認と逃避からのリストカット
依存対象者と物理的・心理的に離れる際に生じる不安(分離不安)に直面するのを避けるためにリストカットに及ぶパターンです。
辛い思いを振り払い、思考回路から切り離そうとする意図でリストカットを行ってしまうようです。
分かりやすくいうと、大好きな恋人に嫌われたらどうしよう、いつか捨てられるんじゃ、といった不安で圧し潰されそうにな時にリストカットをしてしまっているような感じです。
3-3. 自我を取り戻すためのリストカット
この世の全てから見捨てられているような意識からくる空虚さは、時に、自分が自分でない感覚や、自分が非現実的な世界にいるように感じさせてしまうことがあります。
このような精神状態から我に返るために、リストカットをおこなうパターンです。
ひどい場合は、トランス状態からリストカットを行い、流れる血を見て初めて我に返ることもあるようです。
アニメとかでたまにある、「主人公が心の弱みをつかれ幻術をくらった後、自らの剣で身体を傷つけて我に返る」みたいな感じでしょうか。
このパターンの場合は、リストカット時の記憶がなかったり、リストカット後には安らかな精神状態や満足感を感じることもあるようです。
我に返るための自傷行為はリストカット以外にも、「根性焼き」といわれるタバコの火を押し付けるような行為も若者の間では多く見られます。
3-4. 手首の人格化によるリストカット
これは、自分の手首を対象に見立てて、怒りなどをぶつけるパターンです。
怒りを外に向けることができない場合に、そこからくる攻撃性を自分自身に向けて発散する結果のリストカットです。
女性の方がリストカットをする人が多い理由の1つもここにあります。男性であれば家庭内暴力などのような形で外側へ発散される場合が多いのですが、女性の場合はそういった派手な発散をしづらいために、攻撃性が内向した結果でリストカットを行うことも多いとされています。
ちなみに、自分の手首を対象に見立てるということですが、対象は憎い他人に限った話ではありません。価値のない自分自身を手首に投影して切り刻むことで自らを罰するような場合もあります。
自己処罰は、一方で「自分のことを分かってくれない」世界や人に忠実であろうとする思いの表れでもあるようです。「誰も自分のことを分かってくれない」のならば、「自分自身も自分のことを分かってやらない」ことで先に書いたような自分と他人の区別のないような一体感を得ようとするということです。
4. おわりに、NARUTOの飛段(ヒダン)
漫画「NARUTO」の飛段(ヒダン)というキャラをご存知でしょうか。
飛段(ヒダン)は、敵の血液を体内に取り込み、その状態で特殊な陣の中に入ることで、自らが受けた傷の痛みや効果を特定の相手にも与えるできるという「呪術・死司憑血」を使います。
自分が不死身であることを利用し、この効果が発動している状態で自身の急所を突くことで相手を葬る(飛段自身も痛みを感じる)というスタイルの湯隠れの抜け忍です。あとドヤ顔が素敵なキャラです。
出典:NARUTO-ナルト- 巻ノ三十六 77ページ 著者:岸本斉史
自分と他人の完全なリンクを望むことや、自らを傷つけることで相手も傷つけたりコントロールしてしまうというのは、どこか少し似ている気がしませんか。
飛段の「相手の血液を取り込む」という条件に、ある種の愛を感じてしまったら、今まで上に書いてきたことにさらに重なってしまい、飛段に対しての妄想がはかどってしまいます。
最後の最後で急に話があらぬ方向へそれましたが、
自分を傷つけることは時に自分の好きな相手や大事な相手も傷つけてしまっていることを、たまにでも思い出してもらえれば、話がそれた甲斐があったかもしれません。
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